うどん二郎のブログ

95年生/横浜/写真

警護と威嚇

地獄の番犬 相当ご機嫌ねワンワン/鳴き出したら止まらない

ーー相対性理論ケルベロス

トロールの警官が多い街に通うようになった。車を運転していても夕方など10分に一回はパトカーを見かける。これを読まれる方が警察権力にどんな考えを持っているのかは見当もつかないけれど、こうも警官にすれちがうと疲れる。職質などはめったにされない。でも、ただ歩いているだけなのに牽制されている気になる。拳を見せつけられている気にさえなる。多くの警官が配備されることによって街の治安がどれほどよくなっているかは知らない。逆に犯罪が多いから大量に警官がいるのかもしれないが、どっちにしたって緊張する。

カメラロールを振り返ると昨年(2022年)の9月27日は安倍晋三国葬があった日だった。ここで国葬についての政治的な検証はしないが、ごく私的にその葬儀の現場に遭遇していたことは記しておく。というのも、都内の別の場所に用事があり、たまたま九段下を通ることになっていて、せっかくだから降りてみたのだ。

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とうぜん日本武道館周辺は人でごった返していた。その中にはやはり、拳銃をぶら下げたたくましい警官たちも闊歩していた。銃弾で死んだ人の葬儀の警備のために銃をちらつかせるなんて不謹慎な話だ。ともあれ、国葬反対派によるデモもあったし、その日の九段下は雑多であった。

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街には公の警官のほかに市民による見守り隊的なパトロール集団も周遊している。交通安全対策がおもな名目のようだけど、人はこうも見張りたい側につきたいのかと思う。取締欲というか。そしてどうしてそちら側に簡単にまわれると思うのだろうか。

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交通網はしばしば警察権力によって規制される。お祭のときに道が封じられる。郵便局に行くと祭のために郵便が遅れる可能性があるとの知らせを見かけた。ぼくはなぜ人がそこまでして祭をやりたいのかわからないし、そのために道を封じていいのかもわからない。

アクション映画の主役はたいてい刑事か犯罪者だ。両者が単純に裏表の存在だと言いたいわけではない。しかし銃弾を放つ人というのは、どちらかに収斂するのだろう。逃げる/追うのサスペンスが2時間に収まるのはフィクションの良いところで、現実の立て篭もり事件などはもっと時間がかかる。その際、威嚇のために発砲される。ぼくたちは現実の世界で、速報でそのことを知るけれど、遠くのこととはいえ、ちょっと怖いと思うのは威嚇が成功しているのだと言えるだろう。

ところでジョセフ・H・ルイスの監督作に『拳銃魔』(1949年)というのがある。原題はGUN CRAZY。拳銃の携行が許されているアメリカの、銃が好きな男と女の話。この傑作を詳しく紹介したいわけではなく、注目したいのは、もともと主役の男は幼い頃から射的などの目的で銃そのものに魅せられてきたということだ。けっきょく行きがかり上、男は同じく射的が得意な女と出会って犯罪に巻き込まれていくのだが、もともと銃は彼にとってある意味でおもちゃのような存在だった。つまり、上のアクション映画の設定にもささやかな例外があるということだ。ただ、彼も純粋に「銃が好き」というのでは生きられなかったのだが。

よくわからないのは交番での道案内だ。あの仕事も管轄だというのは交番がトラブルのコンビニだということなのだろう。ふつう道に迷った人が行き先についてそのへんの通行人に聞くのははばかられるから、一応公務員である彼らがその任務を担ってくれている、と捉えるべきか。そういえば落し物も交番に届けることになっている。暴力から離れたところにある行為も仕事なのか。ひろく言えば秩序維持ということなのだろうが、たしかに交番の警官に変わり者はいないような気がする。それ自体秩序立った組織だからだ。

JRの駅前には、交番の前に指定喫煙所がある。一服する人は、悪さをしていないか?  と、監視されながら喫煙する。よく一時停止の標識のある交差点のすこし先で、警官が罠を仕掛けるみたいに見張っているのと同じだ。

学生の頃、高速道路を運転していた友だちがスピード違反で切符を切られた。同乗していた別の友だちいわく、「絶対相手選んでるよ」。その通りだと思う。つねに見られている。そしてそれが不当に正当化されている。

まれに、家族構成を調査するために警官が個人宅を訪問することがあるらしい。「息子さんは何をやられてるんですか?」。一年後にまた来て似たようなことを「お変わりないですか?」的に聞くのだという。「隣人への不信」はしばしば煽られる。すべては防犯のため。

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セキュリティの完成度は不安によって高まる。またもや煽られるようにして清廉潔白を装わなければならない。繰り返すが、警官の前を通るときは緊張する。